俳句みんなで詠める 偉い先達の俳句
こうして先生の遺作句を先人の作品に鏤めても少しも見劣りしない。
素晴らしい師匠だった事が弟子藻川亭河童の誇りである。
先生は黒揚羽となって河童の傍に何時もござらっしゃる。
河童は幸せである。
何時は先生の処へ行けるんだから・・・・

001
藤房の盛り上がらむとしては垂れ
01鷹羽狩行
081炎昼のきはみの櫛を洗ひけり05岡本眸
002
藤了えし昼柔らかき無音かな
01林のりゆき
082午後からは頭が悪く芥子の花
05星野立子
003
藤棚を透かす微光の奥も藤
01長谷川かな女
083かき氷海の色して風濡らす
13林のりゆき
004
我が翳を抜け出て翔べり黒揚葉
02林のりゆき
084五十八階全階の秋灯
09辻  桃子
005
白桃に入れし刃先の種を割る
01橋本多佳子
085蛇いでてすぐに女人に会ひにけり
12橋本多佳子
006
正直な風を歩いてさくらんぼ
03林のりゆき
086君羨し晩涼の両手は天へ
08宇多喜代子
007
おでん屋に同じ淋しさおなじ唄
01岡本眸
087羅(うすもの)や人悲します恋をして
07鈴木真砂女
008
蛤を提げて高きに登りけり 
01辻  桃子
088天地ふとさかさまにあり秋を病む
10三橋鷹女
009
靴音が止まり黒揚羽がうしろ 
04林のりゆき
089ぬかづけばわれも善女や佛生會
08杉田久女
010
月光にいのち死にゆくひとと寝る
02橋本多佳子
090サフランや映画はきのう人を殺め
09宇多喜代子
011
恋を得て蛍は闇に沈みけり
01鈴木真砂女
091長き夜の苦しみを解き給ひしや
06稲畑汀子
012
ドビッシーの残響であり薫風
05林のりゆき
092秋深むひと日ひと日を飯炊いて
06岡本眸
013
恐ろしき緑の中に入りて染まらん
01星野立子
093考へても疲るるばかり曼珠沙華
06星野立子
014
あおあおと樹の匂い来てパウロの日
06林のりゆき

巻き貝の中に八月消えゆけり
14林のりゆき
015
兄以上恋人未満掻氷
01黛まどか

堂守りの着替へて若し葉鶏頭
10辻  桃子
016
黄昏をひろう如くに黒揚羽
07林のりゆき

祭笛吹くとき男佳かりける
13橋本多佳子
017
万緑やわが額にある鉄格子
03橋本多佳子

君羨し晩涼の両手は天へ
10宇多喜代子
018
くちびるに夜霧を吸へりあまかりき
01三橋鷹女

怖いもの知らずに生きて冷汁
08鈴木真砂女
019
梅干して誰も訪ねて来ない家
01黒田杏子

あたたかい雨ですえんま蟋蟀です
11三橋鷹女
020
時鳥女はものの文秘めて
02長谷川かな女

われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華
09杉田久女
021
虚子ぎらひかな女嫌ひのひとへ帯
01杉田久女

光る時光は波に花芒
07稲畑汀子
022
乳母車夏の怒濤によこむきに
04橋本多佳子

鰯雲二人で佇てば別れめく
07岡本眸
023
夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり 
02三橋鷹女

女郎花少しはなれて男郎花
07星野立子
024
どちらかと言へば麦茶の有難く
01稲畑汀子

寂寥を河童が食べている晩秋
15林のりゆき
025
あかるさはほたるぶくろの中にこそ
02辻  桃子

豊年のあやふき崖を下りてきし
11辻  桃子
026
春惜しむ掌に勾玉の青置きて
08林のりゆき

曇り来し昆布干場の野菊かな
14橋本多佳子
027
仏母たりとも女人は悲し灌仏会
05橋本多佳子

魂も乳房も秋は腕のなか
11宇多喜代子
028
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ
02杉田久女

笑ひ茸食べて笑つてみたきかな
09鈴木真砂女
029
日本のわれはをみなや明治節
03三橋鷹女

秋風や水より淡き魚のひれ
12三橋鷹女
030
あぢさゐやきのふの手紙はや古ぶ
06橋本多佳子


10杉田久女
031
寂しさは書かず鏡を磨く夏
01宇多喜代子


08稲畑汀子
032
青嵐愛して鍋を歪ませる
03辻  桃子


08岡本眸
033
あるときは船より高き卯浪かな
02鈴木真砂女


08星野立子
034
生き堪へて身に沁むばかり藍浴衣
07橋本多佳子



035
つはぶきはだんまりの花嫌ひな花
04三橋鷹女



036
氷菓舐め痺れし舌をみせあへり
04辻  桃子



037
円周率の外側で食う夏蜜柑
09林のりゆき



038
防人の妻恋ふ歌や磯菜摘む
03杉田久女



039
炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり
05三橋鷹女



040
七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ
08橋本多佳子



041
出欠を考へ考へ梅を漬け
02宇多喜代子



042
包丁を持つて驟雨にみとれたる
05辻  桃子



043
男憎しされども恋し柳散る
03鈴木真砂女



044
風鈴の音が眼帯にひびくのよ
06三橋鷹女



045
東風吹くや耳現るるうなゐ髪
04杉田久女



046
コカコーラ持つて幽霊見物に
03宇多喜代子



047
明るさは海よりのもの野水仙
02稲畑汀子



048
白玉や子のなき夫をひとり占め
02岡本眸



049
美しき緑走れり夏料理
02星野立子



050
自画像の眼の描けぬ夏初め
10林のりゆき



051
胴体にはめて浮輪を買つてくる
06辻  桃子



052
夫恋へば吾に死ねよと青葉木菟
09橋本多佳子



053
ベラの海大きな他人と並ぶかな
04宇多喜代子



054
死にし人別れし人や遠花火
04鈴木真砂女



055
白露や死んでゆく日も帯締めて
07三橋鷹女



056
栴檀の花散る那覇に入学す
05杉田久女



057
夏の日のわれは柱にとりまかれ
05宇多喜代子



058
昼寝するつもりがケーキ焼くことに
03稲畑汀子



059
螢籠螢の死後も闇に置く
03岡本眸



060
娘等のうかうか遊びソーダ水
03星野立子



061
恋人に蒼き羽見え夏の星
11林のりゆき



062
虚子の忌の大浴場に泳ぐなり
07辻  桃子



063
いなびかり北よりすれば北を見る
10橋本多佳子



064
白鷺と水のあわいに病む乳房
06宇多喜代子



065
黴の宿いくとせ恋の宿として
05鈴木真砂女



066
ひるがほに電流かよひゐはせぬか
08三橋鷹女



067
朝顔や濁り初めたる市の空
06杉田久女



068
ねむりつつ深井へ落とす蝶の羽
06宇多喜代子



069
人事と思ひし河豚に中りたる
04稲畑汀子



070
日傘さすとき突堤をおもひ出す
04岡本眸



071
アメリカの銀貨はじめて氷菓買ふ
04星野立子



072
散文めく竜の落とし子水中花
12林のりゆき



073
川照りへ氷菓の棒を捨てにけり
08辻  桃子



074
星空へ店より林檎あふれをり
11橋本多佳子



075
ねむりつつ深井へ落とす蝶の羽
07宇多喜代子



076
死なうかと囁かれしは蛍の夜
06鈴木真砂女



077
月見草はらりと宇宙うらがへる
09三橋鷹女



078
磯菜つむ行手いそがんいざ子ども
07杉田久女



079
丘の木にまぎれて吃る夏鴉
08宇多喜代子



080
花の道つづく限りをゆくことに
05稲畑汀子